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西日本短大付―横浜 試合に敗れ、引き揚げる西日本短大付の選手たち=滝沢美穂子撮影
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 38年ぶりに春の甲子園の舞台に立ち、初の8強入りを果たした西日本短大付(福岡)。第97回選抜高校野球大会の準々決勝までに出た全6本塁打のうち3本(うちランニング2本)を初戦と2回戦で記録するなど、「強打」が脚光を浴びた。

 練習で木製バットを使用するなど、低反発バットへの対応は、16強に入った昨夏の戦いぶりでも証明済み。今大会では、伸び伸びとした「フルスイング」が印象に残った。背景には、西村慎太郎監督(53)が選手にかけ続けた言葉がある。

 「失敗するくらい思い切りやりなさい」

 「失敗して夏につなげよう」

 それを実践するように、斉藤大将(だいすけ)、佐藤仁、安田悠月(ゆうき)の主軸打者(いずれも3年)らが快打を放った。

 「今の子たちは『良くありたい』『応えたい』という気持ちが強い。とにかくそういうのを捨てる。失敗からしか学べないこともある」と西村監督は意図を説明する。

控え選手も「気持ちが楽になった」

 出番が回ってきた控え選手にも、その言葉は効果を発揮した。

 大垣日大(岐阜)との初戦で、2番打者で内野守備の要、井上蓮音(れお)遊撃手(3年)が左足を負傷し、代わりに藤本進源選手(3年)が途中出場。山梨学院との2回戦では、新チーム発足後初の公式戦先発となったが「自分のできる役割を果たす」と臨み、犠打を確実に決めて強烈な安打も放った。

 継投策で戦った横浜(神奈川)との準々決勝では、甲子園初登板で公式戦の経験も少ない山口晃生投手(3年)が先発。「気持ちが楽になった」と力を発揮し、3回を無失点に抑えた。

 「みんな思い切ってプレーできていた」と小川耕平主将(3年)。控え選手が活躍する雰囲気について、「ベンチ入り20人は選手間投票で選ばれたメンバー。お互いを信頼し合っています」。

 井上選手や、準々決勝で先発できなかったエースの中野琉碧(るい)投手(3年)が、ベンチの先頭で声をかけ続ける姿もあった。

「互いに褒め合う言葉、プラスに」

 西村監督は選手同士の言葉の掛け合いも重視する。「互いにほめ合う言葉がプラスになる」と他の選手のプレーに興味を持つよう繰り返し説く。

 練習では、ベンチ入りできなかった部員が務める打撃投手たちへの感謝の言葉が飛び交う。懸命に腕を振り、勢いのある球を投げ続ける姿に、「一生懸命投げてくれたおかげ」。本番でみせた強打には、こんなところにも要因がある。

 準々決勝までに対戦した3校は全国レベルの強豪だった。東海大会優勝の大垣日大、2年前の選抜で優勝した山梨学院、そして関東大会と明治神宮大会の覇者・横浜。

 西村監督は「多くの選手が成長できたことが収穫。3試合させていただいたことが、全ての面で財産です」。

 「夏に戻ってくる」と誓う西日本短大付の選手たち。福岡県内の各チームにとっては「打倒・西短」の目標が明確になった。夏の甲子園の切符をかけた戦いはもう始まっている。

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